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益子のこと

益子町は益子焼という陶器で知られる町です。栃木県の南東に位置し、平野と山地の境界にある自然豊かな里です。私はそこで生まれました。


同級生にはご両親が陶芸家で東京や海外から益子に移住して来た者がおり、一方で代々益子に住んでいる私のような者もおり、田舎ながらも多様性のある環境の中で育ちました。


益子と言えば、民芸運動の中心で活躍された濱田庄司さんが最も有名なのではないでしょうか。濱田さんは1920年に陶芸家のバーナード・リーチさんと共に渡英され、その時に体験した英国南部の村での健康で自由な暮らしに大きな衝撃を受けたそうです。そこでの暮らしは以前訪れたことがあった益子を連想したそうです。そして後に濱田さんは益子に移り住む事になるのです。


益子焼はよく素朴な陶器と言われます。私は素人ですので感想の域を出ませんが、濵田さんの陶器はとてもモダンだと感じます。濱田さんの流し掛けの手法は、私にはジャクソン・ポロックの抽象絵画と重なって見えます。民芸という言葉が持つ庶民的素朴さとは裏腹に濱田さんは先進的な知識人です。世界中の陶器や美術に精通しておられました。濱田さんの陶器は素朴さと近代的な先進性が同居しているように感じます。


私自身、今は益子を離れて暮らしていますが、いずれまた益子に戻って暮らしてみたいと思っている自分もいます。離れてこそ魅力に気づくという事なのでしょうね。東京圏の外縁にあって健やかで独自の存在感を放つ益子はとても魅力的です。私にとっては離れつつも離れ難い、自分の根っ子なのだろうと思います。


文:大久保元彰



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